不動産の売却をするときに買主が見つかり売買契約をするという段階で、相対契約か持ち回り契約かどちらにするかという話になります。
売主が買主に相対して契約するか、否かという話です。
今回は不動産売却における「持ち回り契約」についてメリットやデメリットを解説していきます。
不動産売買の【持ち回り契約】とは?メリット・デメリット
不動産売買の契約というと売主買主が集合して契約書に署名押印するようなイメージがある方もいると思いますが、持ち回り契約というのも一定数あります。
持ち回り契約とは?
持ち回り契約とは、売買契約時に売主と買主が同席できないということで、不動産仲介業者が売主と買主それぞれの場所に持ち回り説明や署名押印などの契約作業をする契約方法のことです。
不動産業者が契約書などの書類を持って回るからこの名前で呼ばれます。
逆に買主・売主が実際にあって契約する契約のことを「相対契約」と言ったりします。
こんな持ち回り契約はどんな時に使われるかというと
- 売主買主のどちらかが遠方
- 売主・買主の日程が合わない
- 事情があり顔を合わせたくない
といった時に使われます。不動産売買契約は決まればそれぞれ心変わりのないうちに早めに終わらせたいものです。ですが意外と日程が合わない。現場の不動産営業マンからするとそんな時によく使われているものになります。
持ち回り契約のメリット
不動産売買契約において持ち回り契約のメリットは
- スケジュール調整がしやすい
- 当事者の交通費削減
- 相手に会わなくて済む
というメリットがあります。
不動産業者にとっては時間調整は大変な作業ではあります。
不動産営業マンの時間は仕事なので売主さんや買主さんに合わせることができますが、相対契約となると売主さんと買主さんのそれぞれの空いている時間にする必要があります。居住中物件のご見学の日程調整と同じく一般の方と一般の方のスケジュール調整は意外と大変です。
また売主さん買主さんとしては、あまり相手に会いたくないという方もいます。特に知人の場合や親戚の場合などは元々人間関係が良くなかったりして相対契約を避ける場合もあります。
持ち回り契約のデメリット
逆に持ち回り契約のデメリットは
- 契約締結当事者の認識のズレが生まれる場合がある
- 手付金授受で問題が生まれる可能性もある。
というようなことがあります。
手付金問題は正直我々不動産業者にとっては「ちゃんとするから全然大丈夫」という話ですが。。。
持ち回り契約となると売主買主は当事者同士で会わないですので、契約に関する認識のズレというものが生まれる可能性もあります。
もちろんそういったものを無くすために我々不動産仲介業者がトラブルになりそうなところを先回りして書面化することによってトラブルを未然に防止するのですが、やはり実際に会って会話するというところを無くすと認識のズレができる可能性は少し上がってしまいます。
特に実際不動産営業マンをしていて思うのが、売主と買主がお互いに挨拶をして会話をしていただけると人間関係ができ多少のズレもお互い許容しようとする傾向はあります。売主さんで言うと「買主さんの新しい生活のスタートする動き」を見て感情移入したり、買主さんで言うと「売主さんに言われた優しい言葉でこれくらいは自分で処理しよう」と思ったりしてそれぞれ相手に合わせてくれようとします
また手付金の授受の問題もあります。手付金は契約時に支払うお金ですが、契約の時に当事者は会わないですので、支払いは振り込みか、不動産業者が手付金も持ち回ってお渡しすることになります。
持ち回り契約の手付金の授受の仕方
持ち回り契約でどのように手付金を授受すればいいのでしょうか。
預かり証を発行してもらう。
不動産売買契約の持ち回り契約でどのように手付金を受け渡しするかというと、
- 売主の方の契約をする
- 買主の方の契約をする
- 買主に手付金を預かり、買主には「預かり証」を渡す。
- 売主に完成した契約書類とともに、預かった手付金を渡す。
- 売主に手付金の「領収書」をもらう。
- 買主にその「領収書」を渡し「預かり証」を回収する。
というような流れになります。
預かり証を必ず発行してもらうようにしましょう。
預かり証をもらっておかないと一時的にですが、買主さんは不動産業者にお金を渡したけれど、お金を渡した証拠がない状態になってしまいます。ですのでそこで不動産業者にお金を紛失された時などに不動産業者に「お金なんて受け取ってません」なんてことを言われる危険性があります。
手付金は振り込みで行う
このような手付金授受に関しては「預かり証」を発行しないといけないですし、その預かり証を領収書と交換する必要があり面倒というところもありますので、振り込み作業で終わらせる場合もあります。
振り込み作業で終わらせるというのは、不動産業者に手付金を預けることもないのでリスクも低減されているというメリットはあります。
買主さんが署名押印後、銀行やATMなどに移動し手付金の振込作業を行ったりします。
しかし銀行の営業時間や振込の場合着金確認などの問題で持ち回り契約の前に手付金振込手続きをしていただく場合も多いです。
ここで問題になるのは契約作業が成立する前、前日などに手付金の振込作業をすると、買主からすると「手付金も振り込んだし買うのやめるとは言いづらい」という心理状態になることが考えられます。
こうなると宅建業法39条の2項3項に書かれている「解除権の留保」の規定
②宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであつても、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
宅建業法39条の2と3
③前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。
に反するのではないかという議論もあります。契約締結「前」から買主は解除権を制限されていることになり「買主に不利」なやり方ではないかという考え方もできるわけです。
しかし不動産業界の現場では買主に対して「契約をしない場合は、振り込んでいただいた手付金は全額返金する」というような内容の書面を発行するなどして、「事前手付金振込」はよく行われる手付金の授受の方法となっています。
一般的には売主側から持ち回りスタート
手付金の話にもかかわることですが、最近はNetflixで話題になったように「地面師」というような、売主のふりをして別人がお金を騙し取るという話もあります。
このような恐れもありますので、基本的には売主の方の署名・押印されたものを、買主の方に持っていって署名押印し完成という流れにすることが一般的です。先に売主の本人確認や売却意思の確認をした方が買主にとっては心理的に楽なのではないかという考え方です。
売主は売る側本人ですので地面師かどうか疑う必要もないですし、契約締結時は手付金を受け取る側ですので「先にハンコを押す」恐怖心は買主より少ないですので。
事情があって買主からスタートする場合も結構ありますが、「普通は」売主側から持ち回りがスタートするという暗黙の了解が不動産業者同士にはあったりします。
まとめ:不動産売買の【持ち回り契約】とは?メリット・デメリット
- 持ち回り契約は買主と売主が会わずバラバラに手続きする契約
- スケジュール調整が楽
- 契約に関する認識のズレが生まれる可能性は少し高まる
- 手付金の授受の問題もある
YouTubeおるすまの不動産売却チャンネルでは不動産売却に関するお役立ち情報を発信しています。もしよければチャンネル登録よろしくお願いいたします。
どんなことでもお気軽にLINEしてください。
コメント