皆さん誰かに何かを「委任」したことがあるでしょうか。一般的なお話で言うと、市役所などでの手続きを旦那さんとか奥さんなどの親族に委任したり、マンションの総会の議決権をマンションの理事長に委任したことがある方もいると思います。
委任とは自分の権限を誰かに渡して代わりにやってもらうって感じのことですが、
不動産売買においても、本人が何らかの理由で動けない場合などに「委任」が用いられる場合があります。
今回はそんなマンションや土地や一戸建てを売却する場合の「委任」について紹介していきたいと思います。
どんな時に「委任」で不動産売買するの?
普通自分の不動産を売却する場合は自分で手続きをします。自分で不動産業者に行き話を聞きますし、自分で売却を依頼する不動産業者を選び、その業者と媒介契約を締結すると思います。
ですが、場合によっては自分自身でそれをするのが現実的ではないと言う場合もあります。そう言った場合に委任というものが使われます。
物件所有者が高齢や未成年
まずよくあるのは物件の所有者が高齢の場合です。その他にもケースとしては少ないですが未成年者の場合というのもあります。
高齢の方の場合は、老人ホームに入っていて現実的に移動したりするのが難しいというような状態の方も多いです。高齢化社会になってきてご高齢の方が使わない不動産を所有しているというケースも多々あり、息子さんや娘さんが代理人として売却活動を実際に行われるケースは非常に増えました。
ご高齢の方も元気な方が多いので本人で動き回ってお子さんたちがヒヤヒヤしているケースも同じく増えてます。
逆に未成年の方が相続などで不動産を所有している場合には、法的に自分で不動産を売却するという有効な意思表示はできないため、法定代理人が代わりに手続きをすることになります。
物件が遠方など・売却のための時間を取れない
その他には不動産を売却するにあたっての時間を取れないという方もいます。具体的にいうと住んでいるところと売却したい物件が離れ過ぎていて誰かに委任する必要があるという場合です。
海外に引っ越されている方なども日本での不動産売却をする必要があったりします。そう言った方の場合は弁護士の方が委任されて売却活動をされたり、故郷の不動産を売却するような場合はまだ地元に残っている親族などが委任を受けているケースも見られます。
所有者が複数人いる
あとは所有者が複数いる場合です。不動産売却に関する手続きはその不動産の所有者全員揃っての決定で進んでいきます。書類にハンコを押す場合などは所有者が複数人いる場合は大体全員分のハンコがいるわけです。
ですが、旦那さんと奥さんの共有なら何とかなるかもしれませんが、所有者の数がもっと増えたりすると調整が困難になります。そういった場合に代表の誰かに委任する形で手続きを簡略化するという方法はよく取られます。
また先ほどの夫婦で共有している場合などにおいても離婚した後の不動産売却手続きなどでは時間的には大丈夫ですが心情的には顔を合わせたくないという場合もあります。
そんな時にも弁護士などの専門家に委任するというケースもあります。
不動産売却の委任・準備や流れ
それでは具体的にどういった形で委任をすべきなのか紹介していきます。
そもそも誰に委任すべきなのか
そもそも誰に委任すべきなのでしょうか。法律上は誰でも委任していいことになっています。親族でなくても昨日今日会った赤の他人でも委任状によって不動産売却の代理人にすることができます。
ですが基本的には「信用できる人」に委任すべきです。代理人は自分の代わりに活動する自分と同じ権利をその人に与えるということですので、悪意のある人に委任してしまうと損な契約を締結されたりする可能性もあります。
そうは言っても信用できる人とはどんな人かということになりますが、2種類あって「親族」か「有料の専門家」になります。
親族は基本的には運命共同体的な親子関係や夫婦関係などのある関係性であれば、あまりにもひどい代理行為をする人もいないでしょう。そういった流れで言うと、友人や会社の同僚などに委任するのは危険です。
もう一つは有料の専門家に委任する方法です。お金を払って活動してもらうので、本人に不利益になる行動をした場合は後で法的な対応もしやすくなります。弁護士や司法書士などに委任すれば法律上の知識もあります。
委任状はどんな書類?
委任状には決まった書式はありません。不動産業者が大体いつも使っている書式があるので、依頼する不動産営業マンにもらったら早いと思います。
多く場合委任状には
- 実印で押印
- 印鑑証明も添付
- 住民票添付
- 代理人や本人の身分証明書確認
などを行います。実印と印鑑証明書で本人の委任する意思を確認して、住民票や身分証明書で本人と委任された代理人の関係性を把握するのです。
後で本人に「そんなん委任してませんけど」って言われると困るので最低限の確認をする不動産業者が多いです。
実印が押されていて印鑑証明が添付されていても、本人に代わって実印や印鑑証明カードなどを管理している親族の方も多いと思います。そういった方の場合は本人には無断で勝手に信用されるような委任状を作ることもできるのが実情です。
状況的に委任関係があるのか把握しづらい場合は、不動産業者が本人にお会いすることを求める場合もあります。
不動産売却の委任で失敗しないためには?
不動産売却の委任でのトラブルの多くは、話が進んで行った後に本人さんから「そんなこと委任してないよ」とか「そこまで委任してない」というような委任の権限に関するトラブルが多いです。
委任事項に疑義がないように注意する
不動産売却に関する委任をする場合には、「どこまで任せるのか」を明確にしておかないといけません。あとから疑問が出るような内容ではトラブルの元です。
特にしてほしくないことなどがある場合は「禁止事項」などを記載して、明確に代理できないようにすることも必要です。
しかしあまりに限定しすぎると今度は「委任」をしている意味がなくなりますので、本人が動かないといけなくなってしまいます。
よく書かれている文言としては、
本状に記載されていないことについては、その都度所有者本人と相談するものとする。
委任状例文
というような内容が書かれてあったりします。代理人の独断で決められる範囲と代理できる範囲を明確に定めておくことによりトラブルは回避できます。
白紙委任・捨印を押さないように注意
次に全て任せるというような意味合いで「白紙委任」というような委任もあります。委任する内容は記載せず、委任することだけ合意するというもので、全権委任という意味合いがあります。
その他には捨印を押すというものも注意が必要です。捨印を押しておけばその隣に後から都合のいいことを書いて委任されている範囲を広げたりすることも可能になります。
登記などで司法書士などの専門家に対して手続き上のミスに備えるための「捨印」などは慣例として行われたりしますが、不動産売却においては「白紙委任」や「捨印押印」のような包括的な委任をするようなものは避けた方がいいです。
とはいえ親族間の委任の場合は全権委任されたような親族の方が代理人として活動するのが普通ともいえます。「息子やし全部任せておくわ」というのは当然という部分もあるでしょう・
委任状には委任の有効期限も書こう
委任状には有効期限を設けた方がいいです。なぜなら委任状の内容について揉めた時に、有効期限のない委任状の場合は、有効な委任なのか有効性の問題が生じたり、無権代理と言われるような委任されていないのに代理で動いたというように判断されるケースもあります。
これはどういう意味かというと、日付がない委任状だと
- 「一生この不動産を売却する権限をこの代理人に委任したということ?」
- 「それは現実的ではないですよね?」
- 「そうなるとこの委任状自体有効なんですかね?」
というような理論で、委任状の有効性に疑問が出るということです。日付を明確にしておくことでいつからいつまでの委任であることがわかると同時に「委任したことに対する信憑性」も上がるわけです。
委任状は実印で印鑑証明もつけて
不動産売却の委任状の信憑性を高める方法としては、その他にも実印での押印と印鑑証明書を添付することがあります。
委任状は形式はどんなものでも大丈夫ですので、ハンコは三文判でも大丈夫です。なんなら委任する意思があればハンコも書面も要りません。ですがそれだと当事者は分かり合えていると思いますが、不動産業者や買主など第三者に信用してもらえません。
実務でも、「この人本当に委任されているの?」って疑問になるケースはいくらでもあります。
そういった状態を避けるために実印での押印と印鑑証明を添付します。一般的には実印や印鑑証明書のカードなどは本人が保管し本人しか使えない状態になっているケースが多いです。
親族とかの場合は親族が保管している場合もありますが、少なくとも信用されていない親族が実印の管理を任されていることも少ないですので、委任状に実印が押されていたり、印鑑証明書が添付されていることにより、委任に対する信用度は上がるわけです。
委任状の住所地などは正確に…
その他には委任する本人と委任される代理人の住所まできちんと書いておく必要もあります。
委任する本人の住所は現住所でいいでしょうが、登記簿謄本の住所と現住所が違う場合は、その引越しの流れがわかるような住民票や戸籍謄本などを添付するといいでしょう。
委任を受ける代理人の住所も書き、同姓同名の人物がいる場合に備える必要もあります。
委任しても任せきりはNG
ここまで不動産売却における委任について、信頼できる人に委任したり、委任する権限の範囲を明確に決めておくということが大切ということを言いましたが、一番大事な部分は「委任したけど全部任せきりにしない」ということになります。
これはどういうことかというと、どんな信頼関係があっても、どんなに信頼できる人でも、監視が緩まれば魔がさす時はあるということです。
本人の意思とは無関係に値引きをして、その分のお金を安くしてあげた買主から賄賂としてもらうなどなど、代理人の立場の人間の悪事は数多く目にしますが、そのほとんどが現実的に監視できないということや、本人に監視する気がないという時に起こります。
委任したとしても不動産売却に関して「気にしている」というアピール一つでも違うと思いますので、心がけていただければ上手くいきやすいと思います。
まとめ:不動産売却における委任
- 不動産売却の委任は高齢者や遠方の方の不動産売却に多い
- 誰に委任するかが難しい問題
- 委任の権限を明確に決めておくことが大切
- 委任しても放置しないことが一番大切
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