不動産売却のお話で最早社会問題的に問題になっているのが、「囲い込み」です。一般の方が普通に暮らしているとこんな事が問題になっているなんてことは聞いた事がないかもしれませんが、不動産売却を検討されている方は是非知っておいてほしい問題になります。
不動産業者があなたの物件を囲い込むという意味です。皆さんにとっては売れる確率が下がるという大きな問題があります。
今回は日本の不動産売却の大きな問題点「囲い込み」と囲い込みをされているか察知する方法や回避策について解説していきます。
「囲い込み」とは何?
まず「囲い込み」って何?っていう話からしていこうと思います。
囲い込みとは…
囲い込みとは不動産業者が自社が売却を依頼された物件を他の不動産業者に情報共有せずに、他の不動産業者が買主を見つけられないように妨害する事です。
基本的には不動産業界は販売活動をしている物件というのは、他の全不動産業者に共有され、売却を直接依頼されていない不動産業者も買い手を探す事ができるようになっています。具体的には指定流通機構(レインズ)に物件の情報を登録することにより、自分たちが売却依頼された物件を情報共有しないといけないというルールになっています。
ですが悪質な不動産業者の場合、そもそも囲い込みと呼ばれる他社に情報共有せず自社で販売を完結させて大儲けしようという業者がいます。
具体的な囲い込みの方法としては、
- そもそもレインズに登録せず情報共有しない
- レインズに登録するが他社が問い合わせると「商談中」と言われる
というような形で、他の不動産業者が買主を見つけるのを妨害する不動産業者もいます。
なぜ囲い込みをするのか
じゃあなぜ囲い込みをするのか、なぜ囲い込みがダメなのかということですが、不動産業者は仲介手数料というものを、不動産の売主や買主からもらうという仕事をしています。そして不動産業者が一番儲かるのが両手仲介と呼ばれるもので、売主と買主の両方から仲介手数料を貰える取引です
不動産業者は基本的にはこの取引を狙っています。
私も例外ではありません。両手仲介の方が嬉しいで。
ですがこの両手仲介は利益相反の可能性があり、海外では禁止されているような取引形態になっています。売主の利益を守らないといけない人と買主の利益を守らないといけない人が同じ業者になっているからです。
そのため、日本の不動産業界では両手取引は違法ではないですが、そんな取引ばかりにならないように工夫がされています。それが売却依頼された物件情報を他の不動産業者に共有しないといけないという制度になります。他の不動産業者に物件情報を共有することで、他の不動産業者が買主を探してきた場合
このような片手取引の形態になります。このような取引形態が推奨されているわけです。もちろん他社が買主を見つける前に自社で買主を見つければ「両手取引」になります。
そこで両手取引を良くない方法で狙い出す業者がするのが「囲い込み」です。両手取引にするために、「その物件は商談中なんで案内できないんです」と他社に伝えれば、他社がお客さんを見つけてくることはありません。そんなことで時間稼ぎをしているうちに自社で買主を見つけてきて両手取引を成立させるのです。
囲い込みのデメリット
実際「囲い込み」は物件が売れなくなることです。デメリットはありますがメリットはありません。
- その物件が売れる確率が低下
- 仲介業者の両手取引の確率が上昇
するだけの売却希望者にデメリットしかないシステムになっています。
囲い込みによってその物件を紹介できなくなった他の業者は当然別の物件を紹介します。そして商談中と伝えられたお客さんも「あれはもう売れたのか」ということで普通に別の物件の購入をします。案内してもらえれば売れたかもしれないお客さんを大量に捨てる羽目になるのです。
囲い込みの確認方法・対策
そんな不動産売却物件の囲い込みですが、囲い込みをされていることすら気づきにくいという部分もあるので、囲い込みをされているのか察知する方法と囲い込みを回避する方法を紹介していきます。
なぜか一般媒介契約にさせられたらほぼクロ
まず一番わかりやすいところですが、不動産売却をその不動産業者1社に任せるのになぜか一般媒介契約にされた場合は、ほぼ間違いなく「囲い込み」目的です。
一般媒介契約とは複数の不動産業者に売却を依頼できる媒介契約で、特徴はレインズに登録義務がありません。逆に専任媒介契約は1社にしか依頼できませんが、レインズに物件情報を登録し他社に情報共有する義務があります。
あなたが不動産売却をその1社だけに依頼する場合、通常は「専任媒介契約」を締結します。
ですが専任媒介にするとレインズに登録して情報共有しないといけないので、あえて一般媒介契約にして、「他社には依頼しないでくださいね」って一言口頭で釘を刺すという方法があります。
一社にしか頼んでないのになぜか一般媒介契約書になっていたら「囲い込み」を疑いましょう。
囲い込みされてるか確認したい(レインズで確認)
レインズに登録されているかを確認する方法はあります。まず不動産業者がレインズに物件情報を登録した場合にレインズ登録証明書というものが発行されます。それを売主は業者からもらう事ができますのでそれで登録作業をしたかどうかは確認できます。
さらにこの書類に書かれている確認用IDとパスワードを使うことにより現在の登録情報も売主さんの方で確認する事ができます。
こちらのレインズ売却依頼主用確認ページからご確認いただけますのでご活用ください。
ですがこれはあくまで登録されているかどうかの確認です。このレインズの情報を見て他社がその不動産業者に連絡した時に「商談中です!案内はお断りしてます」というアナウンスを続けられると立派な「囲い込み」です。
トリッキーな囲い込み確認方法
レインズに登録しているかどうかでは最近の囲い込みは察知できません。そうなると本当に悩み抜いたお客さんが弊社に以前来られた事があります。
その方はA社で専任媒介で売却依頼をしているかたで、あまりにも売れないため「囲い込み」されていないか気になるということで弊社に問い合わせをされてきました。
その方の囲い込みか確認方法は簡単で、うちの事務所に来社し、「自分が売り出してる物件を見学したい」と言うていでスピーカーフォンにした状態でそのA社に案内依頼の電話をしてほしいというものでした。
見事に「商談中」と言われ囲い込みされていた疑いを確信に変えられていました。
一般媒介で複数社に依頼する
囲い込みの一番の対策は一般媒介契約にして複数の不動産業者に売却を依頼するという方法があります。一般媒介だとそもそもレインズに登録する義務はなくなりますが、複数社の数社にでもレインズに登録して登録証明書をもらえるように依頼しておけば、全業者登録していないという状況は避けられます。
ですが一般媒介の物件は不動産業者にとってはあまり優先順位の高くない物件になりがちです。複数のやる気のない販売活動より、本気の一社の販売活動の方が強かったりするのが不動産売却の難しいところで、現役不動産業者としては専任をオススメしています。
大手不動産業者だからと安心ではない
最後に大手不動産業者だから安心ということはないというお話をしていきます。
時に「大手不動産業者はコンプライアンスに厳しいからそんなことはしない」という考え方の方や、大手不動産営業マンの営業トークなどがありますが、そんなことは全くありません。
それを証明するデータとしては週刊ダイヤモンドさんの記事があります。大手不動産業者の両手仲介率や仲介手数料率を調査した結果になりますが、
上の方だけ見させてもらっても両手仲介率・手数料率はかなり高い数字となっています。このように大手不動産業者も基本的には両手仲介を狙って販売活動をしているのが現実です。囲い込みだけが原因でこの数字になっているわけではありませんが、大手だから大丈夫というのはちょっと考えないといけない数値になっていると思います。
囲い込みをされた場合にはどうすればいいの?
次に囲い込みをされた場合にどのような対応を取れば良いのでしょうか。
おるすまにもご質問のメールが来たりします。
どのような方法で対処すべきなのでしょうか。
不動産協会や監督行政庁に相談を
基本的には囲い込みをされたという場合にはこの方も質問文で書いているように「契約を解除する」ということになりますが、責任を取らせるという考え方でいくと、不動産協会や監督行政庁に相談することになります。
不動産業者は全日本不動産協会か宅建協会に所属していますのでそのエリアの協会に連絡するか、都道府県庁の宅建課に連絡し状況を相談することからはじめてみてください。
ただ囲い込み系は業者に「責任を取らせる」ほど強力な措置が取られるかと言われるとそうではないケースも多いです。
囲い込みは「どこからどこまでが囲い込みか」と言われる難しい部分もありますし、電話などで会話したものを一々録音しているわけでもないので証拠も残りづらい部分があります。
囲い込みのやり方によってどのように協会や行政の方に言うかは変わってきますが、例えば商談も何も入っていない状態にも関わらず、他業者には「商談中」と言っていた場合には
宅建業法34条の2第8項に、「その物件に申し込みとかが入った場合は遅滞なく売主に伝えないとダメ」というような内容がありますので、他業者に「商談中って言った」証拠があればこういった宅建業法違反に問える可能性もあります。
囲い込みされた仕返しというと、こういったものでその不動産業者が宅建業免許の取り消しや業務停止とかになってくれたら気がおさまるというような話かもしれませんが、
例で出したようなレベルの単発の出来事で重い処分というのはなかなかくだらないという部分もあります。
仕返しというところでいうと納得いく内容ではないかもしれませんが、協会や監督行政庁に相談という形の対応にはなるかと思います。
仕返しは不要・媒介契約解除だけでいい
このご質問の方の、「仕返ししたい」という気持ちはわかりますが、あまり深入りしすぎずに「媒介契約を解除する」という動きにとどめておくのも大事です。
あくまで目標は「その不動産売却を成功させる」というところにありますので、あまり囲い込みをした不動産業者に責任をとってほしいというところに拘るのもあまり本質的ではない部分もあります。
囲い込みによって大きな売却機会を逃したなど、これも個別の事情によりますが。
新しく別の不動産業者を探して仕切り直しで売却活動をしていくというところに注力していきましょう。
まとめ:囲い込みに注意・悪徳不動産業者の不動産売却
- 囲い込みで他社をブロック・両手仲介を狙う不動産業者に注意
- なぜか一般媒介。そして他社に依頼しないでくださいの言葉に注意
- レインズの登録証明書の使い方は最低わかっておこう
- 大手だから大丈夫は全ての業界で「そんなわけないでしょ」
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