不動産を購入すると決めたときに普通は「買付申込書」や「買付証明書」というような書面を売主側に提出することになります。そして皆さんのように不動産を売却する場合は、そういった購入希望者が現れた場合には買付申込書を受け取る立場になります。
申し込みをする人がいるとある意味売主さんとしてもホッと一安心という部分もあります。
今回はそんな不動産売却に関して、買付申込をもらった場合の注意点を、現役不動産業者ならではの裏話とともに紹介していきたいと思います。
不動産売却の際の買付申込書
不動産売買における買付申込書というのは、購入希望者の購入の意思があるという書類になっています。呼び方については
- 買付申込書
- 購入申込書
- 買受証明書
などなど地域や会社によって名前が違ったりしますが、意味合いは同じ書類になります。
買付申込書の法的な意味とは?
それでは買付申込書を購入希望者が出してきたらこれはどういう意味でしょうか。申込書とか証明書というからには法律上の拘束力のある書類というイメージを持たれる方もいると思いますが、実は買付申込書には法的拘束力はありません。
つまりは買付申込書を提出した後も「やっぱり買うのやめます」と言って来たとしても法律上は特に問題はなく、何のペナルティもないのが普通です。判例でも
いわゆる買付証明書は、不動産の買主と売主とが全く会わず、不動産売買について何らの交渉もしないで発行されることもあること、⑵したがって、一般に、不動産を一定の条件で買い受ける旨記載した買付証明書は、これにより、不動産を買付証明書に記載の条件で確定的に買い受ける旨の申込みの意思表示をしたものではなく、単に、不動産を将来買い受ける希望がある旨を表示するものにすぎない
大阪高判平成2.4.26
というような見解が示されており、購入する正式な意思表示ですらまだないという考え方が主流です。
買付申込書に通常書いてあること
次に買付申込書に通常書いてあることをご紹介していきます。買付申込書は先ほど説明したように法的拘束力がある書類ではないので、書類の形式も決まっていません。ですが各不動産業者が使っている書類は大体似たような書式になります。
書いてある内容としては、
- 物件の住所や面積・地目・地番など対象物件の情報
- 購入金額などの購入条件
- 手付金などの契約時に支払うお金
- 住宅ローンの申込額など融資情報
- 有効期限
- 購入希望者の住所・氏名などの記名
と言うような項目になります。
買付申込書の有効期限
買付申込書には物件を特定する情報や購入希望額・購入希望者の住所氏名などの情報の他に有効期限というのも通常書かれていたりします。
一般的には1から2週間の期間になっています。住宅ローンの融資承認後に契約という流れの場合は、長期間住宅ローン審査が必要な場合もあるので、1ヶ月ほどの期間を設ける場合もあります。
本当は法的な書面でもないので有効期間を設ける必要はないのですが、買付申込をしてまだ契約をしていないという状態は売主や不動産仲介業者にとってはいつ契約がなくなるかわからない不安定な状態です。
そういった期間は短い方がいいということで、有効期限を設けるというのが普通になっています。
買付申込書をもらった時の注意点
不動産売買の売主として買付申込を受け取った場合、どう考えどう行動すればいいのでしょうか。不動産業者がこっそり教える買付申込の本当のところを紹介していきます。
買付申込書が来ても契約成立ではない。しかし…
先ほどいったように買付申込書は法的拘束力はありません。ですので購入希望者がやっぱりやめるということもあります。また購入希望者の全員が住宅ローンが通るわけでもないでしょう。融資がおりなければもちろん購入はできません。
しかし普通の営業マンは、購入申込書をもらったとしても、購入希望者の購入意思が固まっていないと感じたり、住宅ローン的に問題があると感じている場合は、申込をもらったことすら売主に伝えなかったり、報告はするものの「期待しないでくださいね」っていうような伝え方をします。
ですので、何の説明もなく不動産仲介業者から「買付申込をもらいました」というような話があったり、申込書が売主の元に届いた場合は、結構な確率で契約が成立すると思います。
買付申込の順番で優先順位を決めるという嘘
買付申込書が複数の方から提出される場合もあります。そういった場合によく言われるのが「購入申込書が到着した順番で優先順位を決める」という話がありますが、売主さんの立場になってみるとわかると思いますが、あれは大体嘘です。
同じ条件で同じようなタイミングに購入の申し込みがあった場合には、もちろんフェアに順番で決める売主さんもいますが、大抵の場合は「どっちの購入希望者と契約する方がスムーズそうですか?」という感じで売主さんは実際に接客した不動産仲介業者に質問をして決めます。
産売却の際に売主側で怖いのは「売れない」の次が「揉める」ですから。。
誰に売るかは売主さんの自由でもあります。
とりあえず買付を取って来ている?
この買付申込書というものについては「とりあえず買付」というものがあり問題になったりします。不動産営業マンが見学者に対して「キャンセルしていいのでとりあえず買付申込書書いてください」という営業手法を取ることです。
これはとりあえず書かせて断れない人はそのまま契約できるという理論であったり、上司に「買い付け取るまで帰ってくるな」的なパワハラを受けているため生まれる営業手法です。基本的にはあまり良くない営業方法といえます。
一般的にはそんな「とりあえず買付」は契約までつながる可能性が低いことを不動産業者自信も自覚しているので売主さんまで報告しないことが多いですが、売主側に「頑張っている感」を出すためにそういった無駄な買付申込書も売主さんに提出する場合もあります。
そういった話で言うと、売主として買付申込書を受け取ったとしても「とりあえず買付」なんじゃないか疑ってみる必要があります。
価格交渉しすぎな買付申込に対する心構え
最後に販売している価格での購入申し込みが来たらそれは文句ないですが、値下げが条件の購入の申込みなどもあります。
もちろん許容範囲内であれば、それを受け入れて契約に進めばいいのですが、あまりにも価格交渉の金額が大きくなると「なんか失礼じゃない?」っていう気持ちになる場合もあるでしょう。
しかしこのような自分の思っている範囲を超えての値下げの要望であったとしても、あまり過剰に反応しないのがベストです。
「まあそんな人もいるよね」くらいのテンションでいましょう。
値下げの要望を丁重にお断りすれば、購入希望者の方が譲歩した条件でまた購入の申込をしてくる場合もありますし、感情的になりすぎるのも良くありません。
まとめ:不動産売却時の買付申込書
- 不動産売却の時に買付申込書が来てもまだ契約になるとは限らない
- 油断はできないけど売主まで買付がくるということは、期待できる!
- 買付がたびたび流れる不動産業者は要注意
- 失礼な価格交渉は「気にしない」
今回は売却側でしてが購入側が買付申込を書くのか書かないのかというような視点で書かせてもらったこちらのページもご参照ください。
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