不動産の物件の中で人が亡くなるなどした場合にはその物件を「事故物件」などと言ったりして、不動産業者や売主貸主は買主借主に告知しないといけません。そんな不動産の心理的瑕疵の告知ですが、よく言われるのが「一度入居者が変われば告知義務が無くなる」というような話があります。
これは場合によってはあってるんですが、全部に当てはまるルールだと思っている人が多いので誤解している方が多い内容になっています。
今回はそんな事故物件を「一度入居者が変われば告知義務が無くなる」というお話について紹介していきたいと思います。
一度入居者を入れ替えたら告知義務はなくなる?
不動産の取引において「一度入居者が入れ替わったら告知義務が無くなる」というお話がありますが、これは一部の取引に限ったことで、すべての取引に当てはまるルールではありません。
入居者入れ替えルールは「賃貸」の「自然死」
よく不動産取引で入居者を一度入れ替えたら事故物件の告知義務が無くなるという話がありますが、青の話は大前提として、
- 取引が賃貸で
- 事案が自然死
の場合くらいと考えてもらって大丈夫です。
不動産の売買取引で持ち主を入れ替えて何とかなる問題と考えている不動産業者は普通ではありませんし、賃貸でも自殺・他殺などの不自然死で入居者を入れ替えたらすぐに告知しなくても大丈夫!というルールはありませんし、そのような運用されている不動産業者は普通とは言えませんのでご安心ください。
国土交通省のガイドラインによる基本ルール
まず国土交通省が出している「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」によると、自然死・事故死などに関しては賃貸・売買とも告知義務はありません。
不動産において過去に自然死が生じた場合には、原則として、賃貸借取引及び売買取引いずれの場合も、これを告げなくてもよい。
宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン
自然死や事故死にはどのようなものがあるかというと、階段からの転落や入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥などが挙げられています。
詳しく解説したこちらのページもご参照ください。
それに続いて賃貸では自殺や他殺などの自然死以外の人の死に関しては「3年間の告知義務」があるというガイドラインを設定しています。
【賃貸借取引】取引の対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した1以外の死・特殊清掃等が行われた1の死が発生し、事案発生(特殊清掃等が行われた場合は発覚)から概ね3年間が経過した後
宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン
つまりは賃貸であっても不自然死に関しては何度入居者を入れ替えても3年間は告知しないといけないことになっています。
賃貸不動産業者が実際にする告知
この国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」によると、賃貸取引では、
- 自然死は全く「告知する必要なし」
- それ以外の不自然死は「3年間告知しましょう」
というルール感になっています。ですがこれでは、借主から訴えられるケースも出てくるので一般的な賃貸仲介業者はガイドラインよりもより告知のレベルを上げて運用しています。
つまり、自然死の場合は本来ガイドラインによると告知義務が無いですが、やはり告知をすることにして、入居者が一度入れ替わってからは告知しないようにする業者が多いということです。
ちなみに不自然死に関しても事案の重大性によっては3年経過後も告知するケースは多いです。殺人事件などに関しては、10年前の事案でも告知するという賃貸業者は普通にいます。
賃貸で入居者何度入れ替え告知しない?という調査結果
2019年の(公財)日本賃貸住宅管理協会は、心理的瑕疵物件(事故物件等)に係る重要事項説明についての調査結果によると、室内での自然死の告知期間を問う調査で
「入居者1回入れ替え」が35.1%一番多い回答で、自由回答では、「内容により期間を設定」「原則1回だが、認知度や入居期間により変更する場合あり」「弁護士に相談」などの回答があったと発表されています。
売買不動産業者にとってはこの入れ替えルールは「都市伝説」
しかし不動産売買をやっている我々からすると、この入居者入れ替え理論はあまり馴染みにある話ではありません。
売買不動産業者からすると・・・
売買専門の不動産屋が長々と賃貸取引の事故物件の解説をしたのは何のためかというと、
我々売買畑の不動産関係者からすると、「入居者入れ替え」理論は都市伝説レベルに関係ない。
ということで、一般の方に事故物件の不動産売却のお話で
「事故物件と誰かに売るときに一回持ち主を入れ替えたら告知義務無くなって普通に売れるんでしょ?」
みたいなことを言われると、「そんなわけないでしょ」って思ってしまうということをお伝えしたいわけです。
一度入居者が入れ替われば事故物件の告知義務が無くなるという話は、①賃貸の②自然死だけで不動産の取引の中でも極々限られた話で、売買はほぼ関係ないし、皆さんが事故物件と言って想像するようなお化けが出そうな重大事件の話ともほとんど関係ない話と思っていただきたいお話です。
売買の事故物件の告知のルール
売買の事故物件・心理的瑕疵の告知のルールは、
自然死→国土交通省のガイドラインによると「告知義務なし」ですが、そんなわけにはいかないので告知します。
不自然死→ガイドラインには賃貸の場合3年という期間がありますが、売買には期間の設定はされていません。重大性を過去の判例などと見比べて告知します。
期間などの詳しい考え方に関しては別のページで判例などを紹介していますので、もしよければそちらもご参照ください。
基本的には不動産売買ではその事案を「知っているか」ということが重要になります。知ってしまっていると告知義務があると判断する場合が多いです。そして本当に知らなくても「知ってて当然でしょ」というレベルのものは告知義務や調査義務違反に問われるケースがありますので、あとあと問題にならないように「告知しまくる」のが売買取引をする不動産仲介業者の基本スタンスです。
事故物件の不動産売却の心構えについてはこちらのページをご参照ください。
ざっくりまとめると
事故物件の告知するしないや期間の問題は事案の重大性によって異なるので本来は表にまとめたりできませんが、誤解を恐れずざっくり表にまとめるとこのような感じです。
ガイドライン | 実際は・・・ | 一度入替理論 | ||
賃貸 | 自然死 | 告知義務なし | 一度入居者が入れ替わるまで告知しよう。 事案によっては数回告知しよう。 | △ |
不自然死 | 3年間義務あり | 事案によってはずっと告知しよう | × | |
売買 | 自然死 | 告知義務なし | 普通は告知します。 | × |
不自然死 | 告知義務あり | 普通はずっと告知します。 | × |
事故物件は「一度入居者が入れ替わったら大丈夫なんでしょ?」っていうお話は、嘘ではないんですけど、実際はそんなことないということはわかっていただけるかと思います。
まとめ:一度入居者入れ替えると事故物件の告知義務はなくなる?
- 一度入居者が変わると事故物件の告知をしない場合もある
- これは賃貸の自然死の一部のケースにのみ当てはまる話ではある
- 国土交通省のガイドラインや過去の判例に基づいて告知する
- 思っているより細かく告知します
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