不動産売却をサポートする不動産業者にもいろいろなやり方があるもので、「セラーズエージェント」「売主専門不動産業者」という業者もいます。
ちなみに我々は違います。そしてその考え方には賛同していません。
今回はそんなセラーズエージェントとは何か。メリットやデメリット。そして普通の不動産業者から見たセラーズエージェントに対する本音について紹介していきます。
セラーズエージェント系不動産業者の注意点
セラーズエージェントとは売主専門の不動産業者のことです。
「sellers agent」。「sell」=「売る」なので「売る人の為のエージェント」ということですね。
セラーズエージェントとは
セラーズエージェントとは売主側の専属代理人として活動する不動産業者のことです。具体的には「私たちは売主側からしか仲介手数料をもらいません」と宣言している不動産業者のことです。
それに対して現状日本の多くの不動産業者はどんな感じかというと、売主さんに依頼されてその不動産を売る努力もしますが、買主さんが来たらその物件の購入のサポートもします。セラーズエージェントと比較すると、売主さん「専属」というわけではなく、買主さんのサポートもする「可能性がある」という違いがあります。
両手仲介と片手仲介の話です。
普通の不動産業者も売却を依頼された物件に対して、他社さんが買主さんを見つけてきた時、その取引だけ「セラーズエージェント」になることになりますが、元々そういった取引しかしませんと言っているのがセラーズエージェントと言われる業者さんの特徴です。
セラーズエージェントのメリット
セラーズエージェントのメリットは
- 囲い込みがない→内覧機会が増加
- 売主側に100%立ったアドバイスが貰える
というようなことがあります。特に囲い込みというのは日本の不動産業界の問題点とも言われます。
囲い込みというのは売却の依頼を受けた物件を、売主買主両方から仲介手数料をもらう為に、他社の購入検討者に紹介させないようにする不正のことを言います。
セラーズエージェントに依頼すると元から買主は自社で探して来ず、買主側から仲介手数料を貰う気もないので、必然的に囲い込みをするメリットもないということで、確実に「囲い込みをしない不動産業者」ということができます。
また売主買主両方から仲介手数料をもらういわゆる「両手仲介」には利益相反という問題もあります。売主は高く売りたい、買主は安く買いたいわけですので、その二つを代理するのは良くないのではないかという考え方です。
こういった点からもセラーズエージェントは売主側からしか仲介手数料をもらわない、100%売主側の不動産業者に依頼することができるというメリットがあります。
セラーズエージェントのデメリット
セラーズエージェントのデメリットとしては、売却活動の熱量・内覧の質の低下が懸念されます。
不動産売却には実際に販売活動をする不動産業者の熱量が重要な要素になります。誰がやっても希望している金額で売れる物件ばかりなら問題ないのですが、頑張らないと売れない物件もたくさんあります。
ネット上で長期間載っている不動産物件を見たり、知人の不動産がなかなか売れない話も聞いたことあると思います。
そんな時に重要になってくるのが不動産業者の熱量になってきます。そしてその熱量はいったいどこから生まれてくるかというと、先ほど問題もあると指摘した「両手仲介」です。
現状日本の不動産営業マンは「両手仲介で儲かる物件の方を頑張って売る傾向」にあります。それはもちろん自分が儲かるからという側面もありますし、また自分が売主さんに売却依頼をされているので感情が入ってしまって何とか売ってあげたいと思ってしまっている側面もあります。
こうなると一つは自分が売却依頼を受けた物件、もう一つはセラーズエージェント経由の物件となると、どうしても購入検討者に勧めるのは前者の物件になります。こうなると囲い込みがないので内覧の機会が増えるけれども…
内覧の機会が増えても決まらないという状況ができてしまいます。
このようにセラーズエージェントに依頼すると、高く売りたいであったり、そもそも売れづらい物件であったりする時に「この物件って誰が熱量込めて売るの?」問題が発生し、結果「値段を下げましょう」という状況になりやすいという部分があります。
セラーズエージェントに対する不動産業者の本音
セーラーズエージェントに対する一般的な不動産業者の本音を言うとすると「そんなに好きではない」というところでしょうか。
差別化をはかり集客したいだけ
先ほどから解説している通り、我々普通の不動産業者も売却依頼された物件に対して他業者が買主を見つけてきてくれた場合はセラーズエージェントの取引と同じような状態になります。ですので両方できます。
うちの依頼者さんがそう求めるなら初めからセラーズエージェントと同じような形での売却も可能です。
そういった意味合いではセラーズエージェントは「売主からしか手数料もらいません」「囲い込みが絶対ない仕組みです」と宣言することによって差別化をはかり集客したいだけじゃないの?って思ってしまう部分があります。
利益相反の問題・囲い込みの問題を解決したいという部分もあるとは思いますが、同業者からすると「集客するための方便」に見えますし、過剰に「囲い込みダメ!」「利益相反になっている!」「海外ではそんなことやってない!」と思ってしまっている客層を取り込む「上手な広告手法」に過ぎず実際「お客様の不動産を売る」という部分はおざなりになっているように感じます。
売却物件を集める能力高め・売る能力低め
不動産を売りたい売主が不動産業者に求めるのは「高く早く不動産を売る能力」だと思います。セラーズエージェントはそういった能力ではなく、不動産売却物件を集める能力が高い人たちが多いです。
売主専門ですって言って一定の層の売却物件を集めます。
物件が集まっているセラーズエージェントさんの取り組みを見ていると本当に売却物件募集の広告戦術が上手いです。YouTubeなどのSNSを利用した一般的な不動産業者がしないような取り組みを導入されています。
ですがいざ不動産売却活動の話になると、売主専門と言っても工夫する方法には限界があります。売却活動報告の仕方の工夫などなど、売却の成否とはそんなに関係ないところの工夫が主になってきます。
実際その物件を買主に広告するのは「他社」で売ってくるのは「他社の営業マン」ですので工夫するにも限界があります。
売主専属の不動産業者にしたところで、専属じゃない業者と同じようなことしかできないので、極端な話「集客がすごい」だけで「売却活動は普通以下」の場合がほとんどになります。
「時代の先を行く」感がサブい
そういった「実際の売却活動は普通以下」というのを誤魔化すためにも、より「囲い込みは良くない」「利益相反は良くない」という情報発信をしていくわけですが、そういった情報発信の行き着く先としてセラーズエージェントあるあるが
- このサービスは不動産業界の時代の先を行っています
- 海外ではこれが普通です
っていう感じを出してくるということです。
あれはマジで痛いと思います。
確かに海外ではセラーズエージェントの制度の国も多いですが、それは両手仲介が禁止されていて反対のエージェントとしてバイヤーズエージェントがいるから成り立つわけです。このようにセラーズエージェントは買主専門業者と売主専門業者に分かれてないと意味のない方法です。
デメリットのところで解説したようにセラーズエージェントに依頼した物件は「普通の」不動産屋が売るわけで「普通の」不動産屋は「普通は」自分が依頼された物件を優先して売るので、セラーズエージェントに依頼しても「真剣に売ってくれる人が1人もいない物件」が誕生するだけです。
海外のように売主専門と買主専門に分業している状態ならそんなことにはなりません。
つまりは先を行っているわけでもなく、現状に合わないことをやっているだけの話というわけで。海外が先かもわかないですし。それを売却物件募集の集客のためにそうでもないのに「時代の先をいく」みたいなテイストで情報発信しているだけと同業者は感じてしまいます。
セラーズエージェント系不動産業者の注意点:まとめ
- セラーズエージェントは囲い込みなし。利益相反の心配もなし。
- でも広告や営業の現場で真剣に売る人はいないことに注意
- 普通の不動産業者は大体彼らを好きじゃない。
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